【第3回】今村病院分院 宇都宮與院長

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「断らない医療」に重きを置く

病院の隣接地でいま、8階建て新病棟の建設を進めています。2017年6月、今村病院分院は新しい病院に生まれ変わります。日に日に骨組みができる現場を見ると、いよいよ開院に向けて気を引き締めなくては、という気持ちになりますね。

新病院は診療科を今より3科増やし28科とします。交通外傷以外はほとんど対応可能になりますので、まずは「断らない医療」に重点を置きます。患者さんが困った時にいつでも医療提供を受けられる存在であること。地域における新病院の役割はそこに尽きます。なおかつ、単に救急で対応できる、ということでなく、一定以上のレベルをもった高度な医療を提供しなくてはなりません。設備面では、血管内治療センターや、高度な手術が可能な手術センターの設置、放射線治療の導入、化学療法室の整備を進め、「がん診療連携拠点病院」の指定と、「総合入院体制加算3」の取得を目指します。がん治療体制を強化するため、専門知識をもつスタッフの確保と育成にも力を入れます。幸い、専門医の布陣は整っていますし、病院全体のスタッフも本当に真面目で一生懸命で、モチベーションも高い。優れた能力とやる気を十分に発揮できるよう、今以上にチーム医療体制を充実させなくては、と思います。


  

紹介と逆紹介、双方向の連動がカギ

新病院が対象とするのは基本的に、地域の医療施設から紹介される患者さんです。レベルの高い医療が必要な患者さんを、断らずに引き受けるためには、今まで以上に地域の医療施設との連携が不可欠になります。連携先の医療施設では対応が困難な場合や急変時に、私たちがいつでもしっかりと引き受けて、病状が落ち着いたら早期に地域の医療施設に逆紹介して戻って頂く、その仕組みが双方向でうまく連動しないと、入院できる人数に限りが出て、受診を断らざるを得ない事態になります。連携強化には病院として力を入れ、法人内での仕組みも作りつつあります。外部との連携強化策として、クリニックの先生方に集まっていただき「地域連携の集い」を開催したり、当院のスタッフが連携先を訪問して相互理解を深めたりしています。人が見えないと、なかなか信頼関係は築けませんし、互いの施設、スタッフを良く知らないまま患者さんを紹介するわけにはいきません。少しずつ、顔が見える関係づくりができつつあると思います。

同時に、連携施設のスタッフとともに当院で勉強会を開き、病気について理解を深めるなど、一緒にレベルアップを図ることも大事です。両方のレベルが上がれば患者さんのためにもなり、こちらとしても安心して戻って頂けます。共に成長していける関係づくりを進めていきます。


 

専門医療の強みと救急医療の調和

Dr Utsunomiya sub今村病院分院が内科の専門施設として開院したのは1984年。内科系を主としながら、これまで救急・総合内科の開設や、外科系を含む診療科の導入を進めてきました。元々持っている専門医療の強みを、いかに救急医療とうまく結びつけるか、を一番の使命と考え、機能強化を図ってきました。専門医療と救急医療、2つがしっかりと調和しながら、両方ともできるという点が、当院の最大の強みです。

開院当初の診療科の一つ、血液内科は、長年地域をリードする立場にあります。成人T細胞白血病(ATL)については私のライフワーク。ずっと研究活動も続けています。造血細胞移植を含め、地域に密着した血液疾患治療に力を入れています。

当院の専門医療は非常に充実していて、脳卒中センターも切り札の一つですし、スポーツ整形外科も鹿児島県でトップクラスです。消化器内視鏡センターの強みに加え、消化器外科が2014年に今村病院から移動してきて、病院の機能としては十分強化されました。


 

医局の一体化で風通しを良く

新病院では、従来は診療科ごとにバラバラだった医局をワンフロアにまとめ、一つの大きな医局をつくります。互いの顔が見えるようになり、診療について相互理解が進めば、紹介状のやり取りも、必要性や緊急性を優先して要否を判断できるようになると思います。一回一回込み入った内容を書かずに済めばいいし、本当に診療で必要な場面では簡単な紹介状を書けばいい。情報交換や情報共有を全部同じ空間でできるのは非常に大きなメリットです。さらに、事務部門、看護部や診療支援部門の幹部もほとんど同じフロアで一体化します。風通しの良さは大切なこと。すごいパワーを生むと期待しています。この総合医局の構想には反対意見もありましたが、情報共有がいい医療の提供につながり、患者さんのためになる、ということで了解を得ました。


 

「人をもって城となす」の考え

診察室も固定化せず、一部を除いて複数科共同で運用する方針です。外来スタッフを効率よく配置できる利点があります。医局にしても診察室にしても、自分だけの小さな城をつくるのは望ましくない、というのが私の考えです。「薩摩は人をもって城となす」の言葉を知っていますか。昔、薩摩藩は七十七万石の勢力を持ちながら立派な城郭は設けずに、居所としての鶴丸城は天守閣のない屋形づくりでした。勝敗の決め手は、堅固な城ではなく、人の力である。個人の力や特徴をつかみ、才能を十分に発揮できるような集団を作ることが大事だ、という考え方です。〝一国一城〟でないのは当面抵抗があるかもしれませんが、一体化のメリット、風通しの良さがだんだんと実感できると思います。要は意識改革です。800人以上の職員がいて、何が得意で何がしたいか、という情報をうまくキャッチして、能力とやる気を活かせる役割を与えれば、生産性はグッと上がるのではないでしょうか。

〝病院力〟を上げるには〝人間力〟が要る。個々の心掛けが病院力をつくります。真のチーム医療、患者さん中心、そこに向かってスタッフみんなが前向きにやりがいをもって楽しく仕事をしていける、そういう病院づくりを、と思います。 

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