リレーインタビュー【保存版】

【第5回】徳之島病院 末満純一院長

2022.11.11

地域とのつながりを強みに

徳之島病院の一番の強みというと、地域とのつながりの強さではないでしょうか。島で唯一の精神科病院として、私たちは大きな責任を担っています。一般病院を含めても、島内には医療機関が少ないので、それだけ地域に根差した存在だと言えます。数少ない医療機関として頼りにされるのは、とてもありがたいこと。徳之島の地に密着していることは、強みであると同時に、いい加減なことではいけない、と気を引き締める原動力でもあります。長年培ってきたつながりを一番の強み、宝として大切にしていきたいと思います。


南三島の精神科医療を担う役割

精神科無医地区に医師を派遣する巡回診療・無料巡回医療相談は20年来続けています。徳之島病院が誇る特長の一つです。慈愛会の公益目的事業の中で、最も公益性が高い部分だと思います。徳之島病院は島内で唯一というだけでなく、沖永良部島、与論島と合わせて3島6町を医療圏とする唯一の精神科病院でもあり、地域社会にとってなくてはならない存在だと自負しています。与論町と沖永良部島の知名町、和泊町の各保健センターに、2カ月おきに医師を派遣して、1回2日間の滞在で20~30件の診療・相談にあたっています。離島の巡回診療に関心を持たれた他県の県議会議員の一行が、今秋視察に来院する予定もあります。台風などの悪天候で派遣を見送らざるを得ない場合もあるのですが、これからも南三島の精神科医療をしっかりと担っていきます。


病院の機能をどう変化させていくか

島の人口が次第に減り、当院の患者さんも減少傾向です。「入院医療中心から地域生活中心への移行」という国の精神科医療政策に沿う形で、病院の機能をどう変化させるか、よく考える必要があります。どうしても在宅での生活が難しい患者さんがいらっしゃるので、一定数の入院病床は将来的にも必要です。現在徳之島病院は206床ですが、患者さんが安心して地域生活を継続できるための十分なケア、フォローの体制を整えながら、退院支援を進め、適正な病床数に減らしていくことになります。地域の受け入れ基盤づくりがまずは大事です。そういった取り組みが、本土から遅れているのが実情ですが、患者さんの地域生活をしっかりとサポートできる体制づくりに一層努めていきます。


地域でのフォロー体制を充実させる

訪問看護の必要性は高く、需要を考えますともっと充実させたいのですが、スタッフの確保が課題です。月平均の訪問件数は平成26年度109件、27年度が87件でした。本年度は幸い件数増加の見通しが立ち、ホッとしています。今後訪問看護には力を入れていかなくては、と思います。

デイケアも患者さんの地域生活支援のために大切な事業です。徳之島病院ではデイケアの送迎サービスも長年続けていまして、年間の延べ利用者数はここ2年間、2400人強となっています。ただ、島のおおらかな気風といいますか、その日その時で気が向いたらデイケアに行くし、休む時もあるし、といった利用状況で、通所者数は月ごとにかなり上下します。気ままですね。それで構わないと思います。訪問看護とともにデイケアも充実させて、引き続き患者さんの地域生活を支えていきます。

退院支援の一つとして、グループホームを開設したのが平成17年でした。10年が過ぎ、やっと軌道に乗ってきたという印象です。今年は職員配置の基準を変更ました。看護師が、従来は必要時のみの訪問でしたが、8月から1名、外来との兼任でグループホームに配置しました。定期的に訪問して、健康管理が行き届くのがメリットです。世話人も、これまでの1名に、兼務の2人を加えて3人の配置としました。利用者の方々の社会復帰促進に継続して取り組みたいと思います。


新病院への想い

慈愛会のフラッグシップ病院となる新病院オープンに向けて、現場のスタッフの皆さんは今とても苦労されているかと思います。オープンした後も、大きな規模となるだけに、管理が大変だろうと思います。ぜひ健康に留意してほしい、というのが私の願いです。言うまでもなく、新病院の機能を十分に活かせるかどうかスタッフの皆さんにかかっています。医療に従事する側の健康があってこそ、患者さんにもより良い医療提供ができますので、心身ともに健康管理をしっかりとしてほしいと思います。