リレーインタビュー【保存版】

【第6回】介護老人保健施設 愛と結の街 黒野明日嗣施設長

2022.11.11

居宅系と入所施設 一体経営がもたらす安心感

愛と結の街には、老健施設本体のほかに、デイサービスや訪問看護ステーションなど7つの併設施設があります。居宅系の事業所と入所施設の一体経営が私たちの強みです。介護が必要な状態で在宅生活を送りながら、いざとなれば緊急避難的に老健に入所できる、という安心感が、ご利用者にとっては大事なポイントではないでしょうか。同じ法人内に今村病院分院など急性期病院がありますので、医療面の対応が十分にできることも、安心感につながります。前方で居宅系の事業を積極的に展開して、老健や病院が後方でしっかりと構えている、そういう頼り甲斐もアピールできる点だと思います。


ケアマネージメントが腕の見せどころ

今年の3月にヨーロッパから視察団が愛と結の街に来られました。その後の講演会や会議での議論を通して、日本のケアマネのシステムの素晴らしさを再認識しました。身近にいて、その方と家族のことを心配し、ケアプランで支援する、まさに理想的であると言われました。そのケアプランの行き着くところは最後の瞬間、つまり死です。私達の施設に入所されている方々の平均余命は7-8年ですから、やはり死を避けては通れません。

愛と結の街では、今年のテーマを「いい最期」としました。「いい最期」を迎えるには、最期の手前の時間の過ごし方が大切です。終末期に入ってから一生懸命やっても「いい最期」にはなりません。例えば書道をたしなんだり塗り絵をしたり、そうすると終末期に入ったときに「あの時とても熱心に取り組んでいましたよね」と家族が思い出を語って、そうすると「よかった」となるのです。最期を迎える手前のプロセスをどうやってうまく過ごせるか、そこがケアマネの腕の見せどころだと思います。最後だけ頑張ってもいい最期にはならないのです。

そこで、今年から我々が内部で頑張るだけではなく、地元のケアマネの方々に声を掛けて、2ヶ月に1回勉強会を開いています。事務的なマネジメントの話ではなく、その人の最後までを一緒に考えられるように、ともに学び合える関係を目指しています。一人の人の最期を一生懸命考えることがひいては地域の方々のいい最期につながっていくと信じて、地域のケアマネとともに我々の出来ることを地道にしていきたいと考えています。


生活を楽しむためのリハビリテーション

通所リハビリテーション(デイケア)の利用で時々見受けられるのが家族の要望で通所リハビリが決まるケースです。以前は我々もそう思って家族にお話していました。しかし、介護保険制度の趣旨からすると正しいとはいえません。リハビリは不足する機能を鍛えるために行うもの。楽しむ時間の提供ではありません。生活が楽しめるようにするための場所なのです。介助がなければ歩けない人が介助なしで歩けるようになる、とか、車いすへの移乗に補助が要らなくなるとか、少しでも自立できるように鍛えに来ていただく場でないといけません。私たちはご利用者と一緒にリハビリの目的を考えて目標を設定します。車いす生活だけど庭仕事をしたい、という希望があれば、できるようになるには何が必要なのか、そのためには何をすべきか、一緒に考えます。結局歩けるまでには回復しなかったけれど車いすの乗り降りが自分でできて、家族が庭に連れて行けば草むしりなどできる、というレベルになれば、庭仕事に参加できたという達成感が得られて、生きがいにもつながります。そうすると「もっと庭仕事をしたいからリハビリを頑張らなきゃ」となります。目的を明確にすることが必要です。そういう考えをもってリハビリを提案できるのも、私たちの強みです。大げさに言いますと、うちのスタッフは高齢者の生きる喜びを一緒に探して見つけてあげるのが仕事かな、と思います。


新病院への想い

慈愛会のフラッグシップ病院として鹿児島県での存在感は大きくなると期待しています。その中で次の段階として将来強みとなるであろう2点に期待します。

一点目はソーシャルワーク
これからさらに増える高齢の患者さんは、病気になった後の暮らしが随分と変わってしまいます。そこを全部マネジメントするのは難しいとしても、相談員がソーシャルワークという専門性の高い仕事が出来る環境が整えば、病院として幅広い提案ができるようになり、サポートの厚みが増して、患者さんや家族がより一層安心して退院できるようになります。そのような満足度が病院の評価を高める大事なポイントに今後なると思います。

二点目は医療スタッフが全力を出し切れる病院
病院のスタッフがいきいきと患者さんのために全力で働き、患者さんの問題に多面的に対応できる病院になってほしいと思います。スタッフがいきいきしていると、患者さんも元気になるのではないでしょうか。そういう病院は必ずや地域に必要とされる病院になるでしょう。そんな病院の後方を担えるように我々も全力でついて行きたいと思います。