リレーインタビュー【保存版】

【第2回】今村病院 鎌田哲郎院長

2022.11.11

在宅療養支援~ベクトルを合わせて~

― 糖尿病内科医として、前任の今村病院分院から現在の慈愛会糖尿病センター(今村病院)まで一貫してチーム医療体制を軌道に乗せています。チーム医療にかける思いをお聞かせください。

糖尿病でのチーム医療の中心は患者さんであり、決して医師ではありません。周りを囲む多職種の医療スタッフが協同でサポートします。25年ほど前、米国から来日されたジョスリンクリニック・スタッフのワークショップに参加して、そのアイデアに出合い、とても刺激を受けました。以来、チーム医療の考え方として常に念頭に置いています。急性期病院の現場では、病状の回復、数値の正常化が治療の大きな目的です。しかし、慢性疾患である糖尿病では、患者さんが自ら治療に取り組むようになることも大きな目標で、それを専門知識を持つスタッフがサポートします。それがうまくいくと、患者さんのその後の人生の質は大きく変わります。糖尿病教育で人生が変わるのです。そういう広く長い視野を持つことが大切と考えています。

チーム医療の推進には、スタッフの教育や能力アップが不可欠です。CDEJ(Certified Diabetes Educator of Japan:日本糖尿病療養指導士)資格取得には2001年3月の第1回認定試験から積極的に関わってきました。当院には理学療法士や管理栄養士、薬剤師と多くのCDEJがいるおかげで、チーム医療がスムーズにできています。人材育成には時間がかかりますが、能力の高いスタッフがそろってこそのチーム医療。人造りが最も大事です。


― 院長就任から半年が経ちました。病院トップとして思うことは。

今村病院で最初に気付いたのは職員のまとまりの良さでした。また、それぞれの診療科の専門性の高さでした。人間同士のつながりがあり、自分たちの病院をより良くしたい、という気持ちを強く感じます。元院長の野村秀洋先生(現名誉院長)が20数年かけてつくってこられた一体感、帰属意識を、引き続き大事にしたいと思います。これまで院内全体が一堂に会する機会がなかったのですが、院長として直接職員の皆さんに自分の言葉で話す機会が欲しかったので、今年1月から月1回、全体朝礼を始めました。今後、今村病院分院との機能分化が進み、今村病院がそれぞれの診療科の専門性を引き続き生かしながら、さらに在宅療養支援にも乗り出していく中で、職員のベクトルを合わせていきたいと思っています。

目下の課題は業務改善。7:1が10:1になり病棟の看護師さんは皆大変な思いをしていると思います。一人ひとりのレベルを上げると同時に、各現場で業務をチェックし無駄を省いていくことが解決に繋がると思います。やらされ感のある委員会活動ではなく、自分達の職場を働き易くするための自発的な小規模ワーキンググループが各部署で出来ればと考えています。そのための工夫を検討中です。成功体験を重ねてさらに次の業務改善につなげていければ、と思います。


― 在宅療養支援病院を目指す今村病院。これからどのようにかじ取りしますか。

実は、医師になりたいと思ったきっかけが、幼いころの往診でした。体が弱く、度々かかりつけの先生に往診に来てもらい、その姿にずっとあこがれていました。医師になってずっと在籍してきたのは急性期病院。今村病院院長に就任後、これまでと全く違う領域の在宅療養について見識を高めなくてはと、慈愛会の在宅療養支援診療所・高麗町クリニックの在宅診療に同行した際、幼少時の往診の記憶と重なって「こういう医療の形もいい」と感じ入りました。在宅療養支援というと総合診療のイメージが強いですが、例えば、今村病院の各診療科の特長を生かした専門別の在宅診療を展開するのも一つのアイデア。この先、専属のスタッフも必要になりますが、これまで在宅に関わったことがなくても、現場を体験して良さを感じ、在宅の分野が好きになり、力を活かしていけるスタッフがいると思います。そういう人材を掘り起こしていければ、と考えています。


― 多忙な院長職ですが、仕事を離れての楽しみ、趣味など教えてください。

登山が好きです。鹿児島大学時代で山岳部に所属し、本格的な登山に目覚めました。毎年夏、北アルプスの剣岳で3週間合宿し、岩登りや縦走したりしたのがいい思い出。トレーニングのために大学の周辺をブロック3個背負って歩いたりしていました。今村病院分院在籍中も、院内で仲間を募って登山旅行を楽しみ、屋久島や学生時代の思い入れがある剣岳にも10名ほどで登りました。山々の自然を写真におさめて、水彩画を描くのも趣味です。年賀状は毎年水彩画入り。今年は冬の韓国岳を描きました。

最近気に入っているのが通勤時のサイクリング。妻が昨年「院長就任のお祝いに」と、欲しかったカーボン製のロードバイクを買ってくれました。振動が極めて小さく、約15分の自転車通勤が、本当に気持ちいいです。


―座右の銘は

「阿留辺畿夜宇和(あるべきようわ)」。鎌倉時代の僧、明恵上人の言葉です。人はそれぞれの立場、職業、境遇において、その時々で自分が何をするべきかを自問し行動すべき、という教えです。今、自分が置かれた状況で、自分のあるべき姿を、その時その場で常に問い続け行動しなくては、と思っています。