【第1回】慈愛会 今村英仁理事長

慈愛会今村英仁理事長

「総合型」病院でやるべきこと

1月に建設が始まった「慈愛会急性期総合型病院」(仮称)は28診療科、400床規模を予定しています。あえて「総合型」と言っているのは、単に診療科が寄り集まった「総合病院」とは違うという意味です。高齢化が進む中、1人の患者さんが複数の疾患を有する例が増えました。昔の「総合病院」では、例えば胃が痛む患者さんは消化器内科で治療し、腎臓も悪いと「次は腎臓内科へ」と指示され移動する、という具合に、疾患ごと、診療科を別々に受診していました。それでは治療がうまくいきません。私たちが「総合型」病院でやるべきことは、患者さんを中心に据え、必要な治療を複数の診療科が総合的に組み立てるスタイルです。患者さんが抱える疾患にかかわる診療科の医師が集まり、診療方針を共同で考えるスタイル。それを可能にするために、結果として、昔の「総合病院」と同じだけの診療科が必要になりますが、それは総合病院を目指す、ということとは違います。

 

診療科を全部そろえるにあたり、仮に100床で経営が成り立つかというと難しい。それなりのスタッフ数も必要です。一方、鹿児島で新しく500床規模の病院をつくっても、そこまでのマーケットはない。経営の論理で必要なベッド数、マーケットから考えて許容できるベッド数、両方を併せ考えた結果が今回の400床という規模になります。


ポジショニング と 制度の枠組み

私がいつも念頭に置くのは、まず病院施設が本当に役に立つ存在かどうか、ということ。イコール、ポジショニングですね。もう一つが、社会保障制度の枠組み。今回の新病院計画に限らず、平成6年の今村病院新築移転を皮切りに老健の新設、精神科3病院の建て替えもすべて、2つの視点で考え進めてきました。「慈愛会急性期総合型病院」(仮称)として生まれ変わる今村病院分院も、昭和59年の開院からこれまで、その役割を考え、適時構造改革を続けてきました。リハビリ病院に始まり、内科系の病院、そしてERの開設など、全部ポジショニングと社会保障制度の枠組みを考えた行動です。いわばマイナーチェンジを繰り返してきました。新病院の建設は、その延長とも言えます。

 

今村理事長

しかし、地域医療構想や地域包括ケアシステムの中で今後どうポジショニングをとるかを考えたとき、もうマイナーチェンジでは対応できないと判断しました。そこで、増築や建て替えと言わず、意識としては全く新しい病院にして、ゼロスタートを、ということにしたわけです。2025年問題を見据えた社会保障制度改革の流れを踏まえると、今が建築のタイムリミットでもありました。ゼロスタートと位置付けるのは「今までのマイナーチェンジの延長という考えではうまくいきませんよ」と職員に注意喚起する意味合いもあります。業務改善ができてはじめて、新病院がきっちりと動き、地域におけるポジションを維持し、次代に生き残れるのです。


「ないと困る」存在に

新病院は「地域一体型」というあり方を目指します。地域に必要不可欠な、「ないと困る」存在です。地域密着型は「あったら便利」な存在。一体型は、病院自体がその地域の核になり、社会インフラのひとつになる。そこが密着型との違いです。「ないと困る」病院となるカギは、地域の住民の方々、医療機関の皆さんにとって、真っ先に相談できる存在であるかどうか、ということ。特に、病診連携が大きなポイントになります。新病院は高度急性期医療も担いますが、鹿児島大学病院や鹿児島市立病院とは違うポジショニングで医療提供することが重要。地域一体型として存在しうるファンクションを考えないといけないのです。

 

20年後、30年後を見据え、常時ポジショニングと社会保障制度改革の枠組みという視点で考えながら、ファンクションが変化することも欠かせません。現在は高齢化社会に合わせた病院機能が必須、今後大事にしないといけないのは若い人たち。ですから新病院に小児科や産婦人科を今村病院から移して開設し、スポーツ整形外科も充実させます。これから活躍する世代のサポート体制も整えます。


切れ目なく役に立てる組織力と教育機関を持つ強み

私たち慈愛会の強みは、高度急性期から回復期、そして在宅まで、医療・介護・福祉のサービスを切れ目なく担える組織力、総合力です。決して囲いこみではなく、どのポイントにおける相談にも対応できるのが強みと言えます。必要に応じて他の医療機関にもつなぎ、ご利用者にとって安心して頼れる存在でありたいと思います。
その強みをさらに高めるには、縦割りの法人内各組織に横串を刺すこと、つまり組織横断的に連携できることが大事です。互いの機能をよく理解し、互いに利用し合えるようにならないといけないし、人事異動も活発化を、と考えています。さまざまな病院施設で経験を積むことが職員一人ひとりのレベル向上につながり、医療の質の向上にもつながります。医療の質というのは、先に述べたポジショニングの上でも重要になります。

 

もう一つそこには、職員教育が不可欠になります。今後、教育ができない医療機関は生き残れないと言っても過言ではないでしょう。慈愛会に看護学校があるのは大きな強みです。看護師養成にとどまらず、全職種の継続教育にも力を入れ、職員のレベルアップを図って地域に貢献することが、公益法人としての使命でもあります。教育機関を持つ強みを生かし、医療スタッフの教育に関しては地域の中核となることを目指します。

 

 

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