教育体制

キャリア開発計画

地域の精神科医療を担う当院では、精神科医療の専門性を高めるために能力開発を進めていくことが望まれています。
そこで、看護実践能力を向上させ精神科医療の専門性を高めることをねらいとして、個人の成長レベルに応じ能力開発ができるように支援体制を整えています。
具体的には、全看護職員を対象に「看護職のキャリアパス制度」を基に、新卒1年目から生涯教育としての研修システムを備えています。
新人から個人の成長にあわせて5段階のクリニカル・ラダーによって機会教育(OJT)と集合教育(OFF-JT)を通して段階的に学んでいきます。実習指導者の研修や医療安全管理者、看護管理者(副看護師長・看護師長)を目指していく研修を受講する事も可能です。また、より専門性の高い看護を目指し、認定看護師・専門看護師の道を選択し学んでいくことができます。さらにジェネラリストとして多くの医療分野の看護を経験し、EBMに基づいた正確で丁寧な看護実践能力を備えた看護師になるために、病院内外の研修で研鑽を積むことができます。
いずれにしても、専門職業人としの自己啓発・自己研鑽が必要であり、それを支援するものが「能力開発体系」です。これらの研修の機会を自ら選択し、常に目標をもち、主体的に学習をして、目指す看護に向かってステップアップできるように、支援しております。

1.谷山病院看護部教育理念

谷山病院看護部は、人間性を尊重した倫理観をもち、看護に対する使命と役割を自覚し、幅広い臨床能力(態度・知識・技術)を身につけ看護サービスの質が保証できる看護師を育成します。

2.谷山病院看護部教育目的

谷山病院看護部は、専門職の自覚をもち、患者の個別性を尊重した計画的な看護が主体的に実践できるよう人材を育成する。

3.谷山病院看護部現任教育目標

  1. 人としての生命や尊厳および権利を尊重し、責任を持ち、平等に看護できる看護師の育成
  2. 科学的根拠(知識)と観察に基づいた的確な看護判断により、患者の特性と状況に応じた看護技術を提供できる看護師の育成
  3. 探求的視点・視線で自己開発(キャリア開発)に取り組む看護師の育成
  4. 社会人として自覚をもち、責任ある行動のとれる看護師の育成
  5. よい組織づくりを目指し、自ら変革を推進していくことのできる看護師の育成
  6. 看護という専門的立場からチーム医療の一員として行動できる看護師の育成

4.谷山病院看護部の目指す看護師像

  1. 個人として尊厳の姿勢をもっている看護師
  2. 看護できることを誇りに思う看護師
  3. 自己実現を探究できる看護師

教育システム(クリニカルラダー)

※クリックで拡大表示します。

クリニカルラダーによる現任教育支援

研修システム

看護部のラダー別研修の他、看護部の集合研修、全職員対象の職員研修などがあります。研修に参加すると、研修毎にポイントが加算され、年度末のラダー評価や人事考課評価の参考にしています。

認定看護師の育成

当院は認定看護師資格取得など長期にわたる研修の場合、出張として認め、勤務扱いでの研修参加、法人内の奨学金制度を利用するなど色々な面で個人のキャリアアップを支援してまいりました。
2022年現在、5名の認定看護師を養成し、それぞれの専門性を発揮し活躍しています。

院内で活躍する5名の声を聞いてみましょう。

JNA認定看護管理者  中薗 明子

私は、2018年に認定看護管理者を取得しました。
社会が求める質の高い看護サービスの提供、経営への参画、地域医療サービスの展開など看護管理者には幅広く管理能力が求められる中、持てる力を活かし、地域精神科医療へ貢献したいと思います。

感染管理認定看護師 中尾 明美

2016年に資格を取得しました。
精神科病院特有の感染管理・対策の重要性を痛感しています。感染症による患者様への行動制限は可能な限り行わず、行った場合は丁寧な関わりと早めの解除を意識し、常に患者様を第一に考える感染管理を目指します。

精神科認定看護師 内田 宏貴

平成24年度に精神科認定看護師を取得することができました。私が専攻しているのが精神科薬物療法看護です。
精神科においては、患者様が治療に納得されない場面もみられます。その中で患者様の意思を尊重し不安や悩み事を共に考え、治療を選択していくお手伝いをしていきます。その治療の選択肢として薬物療法が安全にすすめられるように看護の視点から支援していきます。副作用で困っている方や薬物療法に抵抗を感じている患者様にとって看護師の薬物療法の知識は、即現場で生かされるスキルにつながります。スタッフと共に知識を深めながら患者様のお役にたちたいと思っています。

精神科認定看護師 加藤 和広

2015年に資格を取得しました。
精神疾患を患う人は、入院してくるまでに偏見や疎外感など様々な思いを抱いてこられます。患者さんの気持ちに寄り添いながら、その患者さんらしい社会復帰を目指していきたいと思います。

精神科認定看護師 杉田 真人

2019年に資格を取得しました。
現在、精神科医療・看護は入院医療中心ではなく、地域移行・地域完結を念頭に入れた支援を行うことが重要となっています。そのため、精神科認定看護師として精神障害を持つ方々が、障害を持ちながらも充実した生活を送ることができるよう、自身の看護の研鑽やスタッフの指導を通してサービスの質の向上につなげられるよう努力していきたいと思います。また、スタッフが精神科医療・看護に誇りとやりがいが持てるよう、サポートしていきたいと思います。

精神科認定看護師の広報活動

■看護師の退院調整の役割
生活の場である「家」に帰りたいという患者様の思いを受け止めて、退院後を見据えた「継続看護」をするのは、看護の大きなやりがいにもつながります。入院期間が短縮し、不安を抱えながら退院する方が増える中、その不安を一つずつ解決していく退院調整の役割が今後、看護師に大きく求められてきます。
看護師が中心となり、在宅でも安心した生活が送れるように患者や家族を支援していくための取り組みを行っています。入院に関すること、退院に関すること、その他不安なことがありましたら何でもご相談ください。
地域の保健・医療・福祉サービスとも連携しながら患者様とご家族をサポートしていきます。

■広報活動
認定看護師は重要な「リソース」です。私たちを幅広く活用してもらえるよう広報活動を行っています。

新人看護師研修制度

1.新人看護職員研修の理念

  1. 看護は人間の生命に深く関わる職業であり、患者の生命、人格及び人権を尊重することを基本とし、生涯にわたって研鑽されるべきものである。新人看護職員研修は、看護実践の基礎を形成するものとして、重要な意義を有する。
  2. 新人看護職員を支えるためには、周囲のスタッフだけではなく、全職員が新人に関心を持ち、皆で育てるという組織文化の醸成が重要である。

2.基本方針

  1. 新人看護職員が基礎教育で学んだことを土台に、新人看護職員研修で臨床実践能力を高め生涯にわたって、経験し獲得したことを蓄積し自己研鑽することを目指す。
  2. 医療おける安全の確保及び質の高い看護の提供は重要な課題である。安全で安心な療養環境を保証するため、谷山病院は組織的に職員の研修に取り組む。新人看護職員研修はその一環として位置づけている。
  3. 看護基礎教育では学習することが困難な実践現場の中で、医療チームの中で複数の患者を受け持ち、多重課題を抱えながら、看護を安全に提供するための臨床実践能力を強化することに主眼をおく。
  4. 専門職業人として成長するためには、新人の時期から生涯にわたり、継続的に自己研鑽を積むことができるよう研修支援体制をつくる。
  5. 医療状況の変化や看護に対する患者・家族のニーズに柔軟に対応するためにも、新人看護職員研修は常に見直していく。

3.新人看護師研修制度の実際

研修内容は、厚生労働省の「新人看護職員研修ガイドライン」を基に作成されています。「新人看護師研修ガイドライン」の「看護職員としての必要な基本姿勢と態度についての到達目標」「技術的側面:看護技術についての到達目標」「管理的側面についての到達目標」の他に精神科の専門的な項目としては日本精神科看護技術協会の「新人教育チェックリスト」を基に構成しています。

研修にあたっては、公益財団法人慈愛会の法人内での集合研修をはじめ、病院内集合研修、病棟OJTといった場面で研修を計画しています。谷山病院の新人教育パスに示す企画された研修に積極的に参加し、目標を自ら達成できるようにして支援していきます。

4.教育支援体制

卒後4年以上で後輩育成に関心が高く、実践モデルを示せる実地指導者を各病棟に配置しています。実地指導者は新人とペアを組み、継続的に指導を行います。
また看護職員全員が日々の看護実践の場面を通して、後輩を指導する屋根瓦方式の教育を基本とし、プリセプターや実地指導者だけに負担をかけないように支援しています。

新人看護師研修の様子