お知らせ

  • 第1回ピア交流会in奄美病院

    「よりどころ」の存在 地域生活の糧に
    当事者3名がリカバリーストーリー語る
     

     奄美地区地域自立支援協議会のピア交流会が12月11日、奄美病院研修センターで行われました。精神疾患を抱える当事者3名が自身のリカバリーストーリー(回復過程の語り)を紹介し、病気との向き合い方から仕事のこと、現在の状況まで率直な思いを語りました。会場には入院中の患者様や外来通院中の当事者の方、支援者、病院職員ら39名が来場。真剣な表情で耳を傾けながら、それぞれが自分にできることを考えました。

     協議会は奄美大島5市町村や医療機関、福祉関連事業所などで構成されており、専門部会「ピア部会」には当院の精神保健福祉士も参加しています。同部会が主催するピア交流会はこれまで部会メンバー限定で開催されてきましたが、入院中の患者様に地域での生活をイメージする参考にしていただこうと、初めて外部の方々へ参加を呼び掛けました。


     ウサギとの出合い、友人の存在


     
     当事者として最初に登壇した綾部大地さんは、小学校から不登校になりました。気分循環性障害と診断され、絶望感にさいなまれることもあったといいます。しかし就労支援事業所でのウサギとの出合いや、信頼関係を築けた同窓生の存在が心のよりどころとなったそうです。


     人前に出て自らを語るピア活動については「私も勇気付けられる人がいるのではないか。励ますことができるのではないか」と考えたと語り、「皆さんにもできる。人生を語ってほしい」と訴えました。



     うつは自分との闘い。そうは周りにも影響



     中田千恵さんは双極性感情障害を発症し、入退院や離職を経験してきました。うつ病よりも、そう状態の方が大変だと言います。「財布のひもが緩くなり、プレゼント魔になってしまう。言葉遣いや行動が荒くなり、不眠不休が続く。うつは自分との闘いだが、そうは周りの人もきつい」。自分の状態を分かっていてもコントロールできないもどかしさに苦しんできました。

     転機は両親の他界でした。両親の支えがなくなったことで自分に覚悟が生まれ、治療は「受けさせられるもの」から「自ら受けるもの」へと心境が変化。きちんと服薬し、就労支援事業所に通所しながら生活リズムを整えました。

     仕事に関しては、病気を隠していたころ(=クローズ)は離職を繰り返していましたが、病気を明かして障害者雇用で就職することで数年間続けることができました。現在は事業所の利用者からピアスタッフ(パート職員)へとステップアップし、日々清掃作業などに取り組んでいます。中田さんは「病気に配慮してくれる職場環境がつくられ、働きやすくなる。毎日が充実しています」と笑顔で話すとともに、ピアサポーター活動にも意欲を見せました。


     居場所があるということ


     元俊智さんは仕事や家庭のストレスから調子を崩し、双極性障害の診断を受けました。退院後の昨秋、就労支援事業所への通所を開始。それまで3年間、入退院の連続だったことから今年1月には「入院しない」との目標を立てました。通所先では多忙な接客業務も楽しみに変えつつ、事業所・入居先のグループホーム・実家と多くの居場所ができたことも気分転換になったそうです。

     元さんは「支援者やピアの仲間など相談できる相手がいる。1年間入院せずに現在までやってこられた」と晴れやかな表情で語りました。


     
     
     終了後、来場した当事者からは「励みになった」「自分もあんな感じにうまく話したい」などの声が寄せられたほか、病院職員からは「入院している方は退院後の生活が不安だと言うことも多い。スタッフはなかなか上手にアドバイスできない分、とても良かった」との意見も聞かれました。

     この日は意見交換も含めてわずか1時間の短い交流会でしたが、温かい雰囲気の中、充実したひとときを過ごすことができました。今後も継続していけたらと考えています。

     ※記事内の当事者3名のお名前、写真はご本人の了解を得て掲載しています。

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