小線源治療

小線源療法の特徴

  • 前立腺限局癌が対象
  • 入院期間は3泊4日
  • 社会復帰が早い
  • 尿失禁や性機能障害が起こりにくい
  • 良好な5年非再発生存率
  • 保険適応

国立がん研究センターの最新の統計によると、日本人男性で最も多いがんが前立腺がんです。当院ではこのたび前立腺がんに対する放射線療法(内部照射)である密封小線源療法(以下、小線源療法)を2022年12月より開始しました。小線源療法とは4.5x0.8mmの小さな線源(放射性物質)を前立腺組織内に50~80個ほど留置し前立腺がんを根治させるものです。小線源療法には放射線の強さにより低線量率組織内照射と高線量率組織内照射の2種類があり、前者ではヨウ素125、後者ではイリジウム192を用います。当院で実施しているのはヨウ素125による低線量率組織内照射になります。この治療法にはいくつかの長所があります。まず治療による身体的負担が小さく入院期間が3泊4日で済むこと、次に手術療法で問題となる尿失禁や性機能障害がおこりにくくQOLが保てること、そして治療成績が良いことです。もちろん健康保険が適応されます。

対象となる患者さま

低リスクから中間リスクの前立腺がん患者が対象です。具体的には転移のない患者で、PSA値が20ng/ml未満で、グリーソンスコア(悪性度)が7点以下、がん病変が前立腺内に限局している患者が対象となります。

治療の手順

あらかじめ前立腺生検で得られた情報をもとに、患者ごとの前立腺がんの局在を確認し、どこに線源を配置すると有効かつ十分な照射ができるかの線量分布をコンピューターで計算します。そのデータに基づいて、小線源を前立腺組織内に留置していきます。治療は腰椎麻酔下で行い所用時間は2時間ほどです。当院では原則、水曜入院、木曜治療、土曜退院の3泊4日入院の流れとなっています。また、前立腺肥大症が合併し前立腺が大きい場合は、恥骨干渉が起こり線源挿入が困難な場合があります。その場合は、治療前に3か月から6か月間ホルモン療法をして前立腺を小さくしてから小線源療法に臨みます。

治療成績

当科の担当医グループが鹿児島大学病院で経験した541名の患者(2006年6月~2019年1月)において、5年PSA非再発生存率(5年間再発なく生存できる確率)は低リスク前立腺がん患者で98.5%、中間リスク前立腺がん患者で96.9%と良好です。

合併症

放射線治療ですので、前立腺に隣接する膀胱や直腸にもわずかながら放射線が当たる可能性があります。したがって、放射線による膀胱炎(頻尿、排尿痛、血尿)や直腸炎(頻便感、血便)や排尿困難が起こる場合があります。排尿困難に対しては尿道拡張作用のあるα1-blockerを用いると徐々に軽快していきます。一方、頻度は少ないのですが、血便が出た場合はまずは泌尿器科医に相談していただくことが必要です。というのも血便の原因として、放射線性直腸炎か直腸自体に起因するがんなどの病変によるものかの鑑別が困難だからです。小線源療法後の血便でいきなり消化器内科や肛門外科にいくと、精査目的で生検が行われることがあります。もし放射線療法後の直腸粘膜を生検すると、同部の治癒は非常に不良であるため難治性潰瘍や尿道直腸瘻ができ、最悪の場合は人工肛門を造設する必要があります。そのようなトラブルを避けるため、泌尿器科では小線源療法を受けた患者さんには全員、注意事項を記載した患者カードを配布しています。

術後のフォロー

治療後は定期的に泌尿器科外来に通院していただき、PSA値の推移や合併症の有無を確認いたします。

Q&A

Q1.小線源療法(ブラキテラピー)って何ですか?

早期前立腺がんに対する新しい根治的治療です。
前立腺に小さな放射線源(シード)を埋め込み、放射線の力でがんを治療します。本治療は体にやさしく、安全な治療法で、しかもその効果は開腹手術に匹敵します。

Q2.この治療の優れた点は何ですか?

  1. 入院期間が短い/当院では水曜入院、木曜治療、土曜退院の3泊4日です。
  2. 体にやさしい治療/傷の痛みはほとんどありません。
  3. 治療効果が高い/開腹でおこなう前立腺全摘出術とおなじ治療効果があります。(5年間非再発率90%以上)

Q3.副反応はありませんか?

大きな副作用は非常にまれです。治療後おしっこがやや出にくいことがありますが、通常は一時的な内服薬で対処できます。放射線の周囲への影響は通常の生活では全く問題ありません。
放射線の力は徐々に弱まり1年後にはほとんどゼロになります。
シード線源はチタン製で安全性が高く、磁気や金属反応を起こさないため他の医学検査や治療には影響しません。空港での金属探知にも反応しません。

Q4.保険は通っていますか?

もちろん保険診療です。治療費は開腹手術とほぼ同じです。

Q5.どのようなケースが治療可能ですか?

早期前立腺がんが対象です。
具体的には前立腺特異抗原(PSA)20ng/ml以下でがんが診断された方です。病理検査の結果により外照射治療の追加が必要となる場合もあります。その他、患者様の身体的条件によりこの治療法が選べない場合もあります。

お問い合わせについて

当院では、小線源治療に関するご質問・お問い合わせにつきましては、099-251-2221(代表電話)でご連絡をお受けし、 泌尿器科担当者におつなぎするシステムをとっております。
手術に関しましては、(かかりつけ医の紹介状をお持ちいただき) 泌尿器科に受診、小線源治療担当医へご相談いただくことになります。また、お問い合わせの内容によっては(担当医師不在等により)当日お答えできない場合もございますので、何卒ご了承願います。

※紹介状がない場合は選定療養費2,750円(税込)をご負担いただきます。